宝箱

宝箱_d0032782_7201958.jpg



思いがけず・・これが見つかった
懐かしい「宝箱」である

少々長いけれど・・こちらを読んでいただけるでしょうか?
boss died

宝箱_d0032782_7203118.jpg



まだ貧しい世の中だったが・・右肩上がりの活気に満ちた時代だった
大学を卒業して30代までのわずかな時期
テレビ番組をプロデュースするのが・・私の仕事だった
カメラを回すのは仕事ではないが・・
ときどき・・どんな調子?・・とファインダーを覗いたものだった

漫画家の松下紀久雄さんをホストにした「日曜大工110番」
スタジオ制作の番組・・まるで合宿みたいな現場だった
スタッフのHさんが・・暇を見つけては手作りしたのがこの宝箱

この番組の直後に退社することになった私に
スタッフから・・と・・プレゼントされた
送別会の夜のことだった・・

宝箱_d0032782_7204511.jpg



この宝箱の蓋の裏側に・・「バカヤロ・・・」とある
誰が用意したのか・・その場で彫刻刃で彫ったものだ
蓋の裏側だったから・・色褪せることもなく
まるで・・昨日のことのように鮮やかである

宝箱_d0032782_7205522.jpg



箱の側面に・・S46・9・9とある・・1971年
40年も昔のことだが・・記憶もまた・・まるで昨日のことのようだ

宝箱_d0032782_721591.jpg



今は亡き我がボス・・人生たったひとりの「我がBoss」
この笑顔もまた・・鮮やかによみがえる
ためらうこともなく・・手にした彫刻刃で
「バカヤロ・・」と彫った・・言葉と裏腹の慈愛・・愛情も
決して忘れることはない

アラスカで倒れた私を迎えにきてくれた・・あの日のボスがこれ
アンカレッジの冷たい氷の世界の中で・・いい笑顔でしょ
モーテルのパーキングで・・・私が撮った写真です


# by kamadatetsuya1017 | 2009-10-20 07:50 |

変遷・・糸抜き技法

変遷・・糸抜き技法_d0032782_9145970.jpg

この10年近く・・
公募展の出品は・・これだった
「糸抜き波状紋大皿」・・概ね50センチ強の皿に加飾したものである
変遷・・糸抜き技法_d0032782_918883.jpg

拡大部分図にすれば・・こう
写真にするとモアレになりやすく・・面倒な装飾でもある
糸を貼り終えたところで・・これから白泥の化粧を施す直前
白泥を吹きつけたら・・後に糸を剥がして紋様を浮き上がらせるという寸法
糸と糸の間隔は・・広いところでも数ミリである
変遷・・糸抜き技法_d0032782_921325.jpg

↑のように波頭を立てる場合もあれば・・
穏やかで柔らかな波を描くこともできる
変遷・・糸抜き技法_d0032782_9221284.jpg

次の展開を考える時期にもきているから
少しづつ・・新しい試みもしているが
これは・・「天衣紋」とでも・・
天女のケープが風に舞う・・そんなイメージだろうか
変遷・・糸抜き技法_d0032782_9222967.jpg

30センチほどの皿にも・・施してみた
実用への応用・・のつもりである
変遷・・糸抜き技法_d0032782_9224320.jpg

黒い素地にオフホワイトの白化粧を掛ける予定である
変遷・・糸抜き技法_d0032782_9233969.jpg

実際に焼成すると・・こんな具合である
変遷・・糸抜き技法_d0032782_9244655.jpg

下絵で色を入れてもみた
しつこくならないように・・そう心がけているが・・
変遷・・糸抜き技法_d0032782_925166.jpg

この50センチほどの「糸抜き菱線紋六角大鉢」
既に焼成してあって・・秋の個展のDMはがきに使う
先日プロのカメラマンさんに撮っていただいて
目下印刷中・・近々ご披露のつもりである

今していることの完成度をあげること・・そして
次に何をしようとしているのか・・を探ること
還暦もとうに過ぎたが・・結構慌ただしい
幸い・・体に不調があるわけでもないので
もう少し・・頑張ってみようと・・思っている


第56回 日本伝統工芸展・・のこと・・more・・で

More
# by kamadatetsuya1017 | 2009-08-28 09:51 | 陶芸

「酸化」・・と・・「還元」

今夜は・・少し陶芸の話・・
↓の二枚の写真は・・
同じ土・・同じ釉薬・・違う焼成方法
ガラリと雰囲気が変わります
「酸化」・・と・・「還元」_d0032782_23524829.jpg

半分陶土で半分が磁器土で作られた「半磁土」を轆轤で挽いて
黒天目釉を掛けて・・その上に鉄赤釉を垂らして
電気窯による酸化焼成で焼いたのが・・これ↑

酸化焼成というのは・・
窯に火を入れてから・・最後まで
たっぷり酸素を送り込んで焼く焼き方
天目釉が僅かに深い溜色のワインレッド色調で
鉄赤が・・真赤
これはこれで・・少し華やかな黒の世界です
「酸化」・・と・・「還元」_d0032782_23532192.jpg

↑は・・
全く同じ土に・・同じ釉薬を掛けて
ガス窯の還元焼成で焼いたもの

還元焼成というのは・・
900度までの酸化焼成の後に
それを越えたあたりから
窯に送りこむ酸素の量を減らして焼く焼き方

判り易く言えば
エントツの引きを押さえて
窯内を燃焼ガスで充満させ
外から酸素を取り込めないように仕掛ける・・ってこと

こうすると
窯の中で・・燃えるために必要な酸素を
中に詰まっている器の粘土や釉薬から奪って
燃えようとするのですが・・
これが・・還元焼成・・というわけです

そのせいで・・
窯の中で・・思いがけない変化が起こり
(これを窯変というのですが)
酸化焼成とはちがった雰囲気がでてきます

一枚目に比べると・・
二枚目の見込みの赤色は・・ちょっと複雑
僅かにメタリックな輝きを含みました
この変化が・・還元焼成の醍醐味ともいえます

同じ土・・同じ釉薬・・なのに・・
焼きあがりの大きな変化が面白いのです

あなたは・・どちらがお好き・・?
# by kamadatetsuya1017 | 2009-08-12 00:21 | 陶芸

ウィンストン・チャーチル

ウィンストン・チャーチル_d0032782_23145366.jpg

ネットでウロウロしていたら・・こんな言葉を発見した
『・・過去を遠くまで振り返ることができれば、未来もそれだけ遠くまで見渡せるだろう・・』
ウィンストン・チャーチルの言葉だそうだ

言い換えれば・・
「昨日のことしか振り返ることのできない人には・・精々明日のことしか見えないだろう」・・でもある
考えてみれば・・賢さとは
知っている知識の量ではない・・想像できる範囲の広さのことだ
洞察 慧眼・・いずれも量ではなく・・質を表す言葉だ
つまり・・知識は昨日であり・・想像は明日
昨日を明日に変える力・・過去を未来に活かす力
それが賢さだと・・私は思う

だから・・
知識の量をもって秀才としようとした教育の本質的な間違いは
その知識が・・想像の深さを育むためのものだと・・教えなかったことだ

折角遠くまで振り返る知識を持ちながら・・
精々明日のことしか考えられない貧弱な想像力
この矛盾に満ちた半熟卵たちが取り仕切る現代社会

たった3年前に終わったばかりの小泉イズムの壁さえ乗り越えられない・・政治家たち
自らの無能を隠蔽するために・・簡単に人を切れる仕掛けに奔走した・・経営者たち
国家百年の計とは・・自ら栄華を極める手順だと信じて疑わない・・官僚たち

人類千年の歴史を紐解けば・・国家の指導者たるべき者には・・
犯すべからざるタブーがあって・・
犯せば死をもって償うほどの不名誉なことである

チャーチルの言葉にこんなのもあった
『金を失うことは小さく失うことだ・・名誉を失うことは大きく失うこと・・しかし勇気を失うことは全てを失うことだ』

指導者としてのタブーを破ったと思うのは・・
権力を手放すことを受け入れる勇気を真っ先に失い 
自らの立場を汚す不名誉にうごめき・・
そのくせ・・
密かに金だけはなんとかしたい・・と暗躍するおぞましさ
政治家に限ったことでない・・経営者も官僚も似たようなものだ

チャーチルの警鐘に・・身を正すのも勇気だが
期待するのも無理なのだろうか
誰とは言わないが・・
多勢の指導者たちの猛省なくしてこの国に将来はない

ついでに書けば
『その国の高齢者の状態を見ると、その国の文化の状況がわかる 』
これもチャーチルの言葉とある
老人をどう遇するか・・国にも礼節は必要だと説いている

この国の文化に不安を抱く老人たち・・
皮肉にも・・日に日に数は増えてゆく
世界に冠たる「長寿の国」ではあっても
世界に冠たる「文化の国」ではないようだ

真夏にうそ寒い話ではないか・・・
# by kamadatetsuya1017 | 2009-08-02 00:11 |

「駒」のセオリー

「駒」のセオリー_d0032782_10443013.jpg

これは・・ヴァイオリンの「駒」である
四本の弦が乗っている
右からE A D G
その順に弦は細く・・音は高い

この「駒」には
微妙な丸みがついているのが見えるが
この曲線が実に大事
曲がり方ひとつで・・
弓をあてがう角度が変わる
弦を変えて音が移行する際に
無駄なく弓を滑らせるには
この角度が重要なのだ

それに・・
二弦にまたがって音を重ねる重音
角度が深すぎたら・・重ねにくい
一方浅すぎれば・・隣りの弦に触れて
単音が弾けなくなってしまう
駒のないギターは・・
弓では弾けない理屈である

左手で指板を支え・・右手で弓をもって弾くから
構えの段階では・・ヴァイオリン本体は
僅かに右に傾くのが普通
その演奏スタイルで・・
弓が自在に弦を選べる角度・・がこれなのだ

400百年以上のヴァイオリンの歴史の中で
経験が生んだセオリーなのだろう
たった四本の弦を・・
必要に応じて・・限りなくスムーズに移動して
単音の美しさを表現できるのも
また・・無理な力を入れずに重音を響かせる技法も
この駒の角度次第・・つまりセオリーがあるからなのだ
「駒」のセオリー_d0032782_10454969.jpg

何ごとにつけ「セオリー」というものは・・
長い間には変わることはあるが
無暗に急ぎもせず・・個人的なものでもない
大勢が理解し承知して受け入れる「広さ」がセオリーだと思う

個性的に生きる・・大事なことだ
しかし・・
だからといって「セオリー」が不要だとは思わない
色々なことが自由に選べる時代と社会になったが
基本的なセオリーが見えない不安な時代と社会でもある

一人の声が届かず・・多勢の声が重ならない社会
「駒」のカーブは・・どうなっているんだろう・・?
# by kamadatetsuya1017 | 2009-07-19 10:50 |