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どんなに広くて真っ直ぐな道も・・目に映れば遙か彼方で小さな点になって消滅する・・それがヴァニシング・ポイント。

1970年代、同名の映画があった。
すさまじいカー・チェイスの後、真っ直ぐなハイウェイの彼方で二台のブルドーザーが道を塞いでいる。そのシャベルの僅かな隙間から強烈な太陽の光りがこぼれていた。

猛烈なスピードで、その壁に向かって走った主人公は車もろともヴァニシング・ポイントに消えた・・・。
このクライマックスが言いたかったことは暴走する若者の死だけではない。
あの壁の向こうの太陽は・・閉塞した若者たちへの希望の光りだったように思えたものだ。

見えなくなった道の向こうにあるもの・・この道の場合、遙か遠くの私の幼い日々の想い出である。
昨日に続く一枚だが・・この白い板の柵ほどしか背丈のなかった私の視線に見えたもの、見えた人々、それが限りなく懐かしい。

ヴァニシング・ポイント・・・歳月は、大事なものをその向こうに隠して汚すことがない。
幼い日の想い出とは・・そうしたものなのだろう。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-29 03:24 | 風物

幼かった日々

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どこかヨーロッパの田舎を思わせる秋。

茨城県にある地磁気研究所。
広大な敷地に小さな観測小屋や研究室が点在し、この景色の中に、私の幼年から少年期の思い出がいっぱいに詰まっている。

戦前から戦後にかけて、私の叔父は、この研究所の技官だった。
戦争が始まって、祖父母は叔父の官舎に一緒に住んだ。
だから、私にとっては田舎のようなものである。

夏の殆どは、ここで祖父母と暮らした。
兎追いしかの山・・小鮒釣りしかの川、見晴るかす田んぼの続く畦に小さな川が流れ、水すましと一緒になって裸で遊んだ。
畑でもいだ玉蜀黍を焼いて食べ、麦こがしに目を白黒させた。

この敷地の中には足跡のない場所などあるはずもなく、隅々まで駆け回って真っ黒に日焼けしていた。
部屋いっぱいに吊った蚊帳を、開け放した廊下のガラス戸越しに涼風が揺らせ、祖母に抱かれて眠った。

12,3歳の頃、叔父一家とともに祖父母が東京に戻って、やがてここは思い出の田舎になった。
60年近い年月が去り、往時の祖父母の年配になった今、しかし、ここに来ると、幼かった日々が鮮やかに蘇る。
この建物は、あの頃のままである。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-28 02:30 | 風物

舫い

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今年の夏、旧友のヨットで湘南の海をクルーズしてもらい、自分が海の男ではないことを思い知らされた。比較的穏やかな海でさえ、僅かに吹く風に踊れば胃の腑を突き上げられる。
慣れといわれればそれまでだが、本当に時化れば、海の激しさはそんなものではあるまい。
海の男の強靭は付け焼刃では身につかない。

海が美しいのは、海が険しいからだ。遠くから眺めても美しいが、海の上なら、海の美しさはもっと荘厳に違いない。
真珠貝の貝の中にもぐりこめば、その核にある真珠の美しさは、美女の首にあるより遙かに美しかろう。蓋を閉じられれば逃げることのできない危険と隣り合わせなければ見られない美しさのはずだから・・。

海も同じだ。危険だから海は美しいのだ。
私は船を見るのが好きだ。船の形も好きだ。文字通り怒涛に立ち向かうための姿だから美しい。風を切るヨットがサラブレッドなら、魚を追って波を破壊する漁船はアラブレッドの馬のようだ。洒落てはいないが力がみなぎっている。

板子一枚、下は地獄を肌で知った男たちの鉄板の城。那珂湊の岸壁に舫いをつないだ真っ白な船体は、明日になれば、また戦場に出向くのかもしれない。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-14 22:49 | 風物

梨灰釉小皿

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我が家の近くには梨園がたくさんあります。
梨園は、毎年年明けの寒いころに枝を払います。
広い梨畑ですから、一箇所に集められた枝を燃すと大きな灰の山ができるのです。

時々、懇意にしている梨園さんから、その灰を分けてもらいます。
ふるいにかけて水瓶につけ、時間をかけて灰汁抜きをします。
やがて、天日で乾かすときれいな粉末になりますから、それに他の釉原料を加えて釉薬を作ります。ここまでに案外手がかかるのですが、これで自分だけの釉薬ができます。

この小皿は、その梨灰釉を掛けて焼いたもの。レンガ色が気に入っています。
使うほどに滑らかになり、レンガ色が深く沈んで愛着が生まれるのです・・。
秋から冬への器かな・・・。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-02 01:43 | 陶芸

轆轤

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出品の大皿作りも一段落、昨日は最後の窯を焚きながら、小さな食の器を挽いていました。
細かい計算をしながらの大皿に比べて、気持ちのまま、手の赴くまま・・これも轆轤の醍醐味です。

指に覚えさせた形を、無心に繰り返すひととき・・こんな時間が無性に好きなのです。
案外まじめに挽いて、でもちょっとだけ遊ぶ・・そんな気分で楽しみました。

径が15センチほどのこの小鉢、乾いたら高台を切って、それから刷毛で白い化粧土を施します。素焼きをしてから石灰釉をかけて刷毛目粉引きにしようかと・・・。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-02 01:21 | 陶芸