ジャック・ニクラウス

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この写真は・・
2年ほど前に撮ってアップしたことがある
シャボン玉の底についた雫が・・まさに落ちる瞬間である
殆ど偶然に撮れた・・それこそ千分の一秒の世界かもしれない
しかし・・このとき・・
これを捕まえたくて何度もシャッターを切ったのを覚えている


いつだったか・・
今 日本橋の三越で開かれている東日本伝統工芸展の母体
日本工芸会が主催の勉強会で・・
審査を努める高名な陶芸家が・・こう話した

『日本伝統工芸展の審査にあたって・・
ここでは完璧な技術で作られたものでなければ通らない
しかし・・同時に
その完全な技術が作品に見てとれるようでは
これもまた通らない・・』

禅問答のような教訓だが・・
この意味が判るような気がした
ひとつの出来事を思い出したからだ

ジャック・ニクラウス・・不世出のプロ・ゴルファーである
前回のボビー・ジョーンズと対極に位置する天才だった
数年前・・セント・アンドリューズの全英オープンで現役引退を表明し
全ての観衆のスタンディング・オベイションで送られた
あの姿が目に焼きついている

かなり昔・・そのジャック・ニクラウスが来日した際に
NHKが収録した彼のレッスンを見たことがある
これひとつで・・色々なことが書けるほど
エピソードに富んだレッスンだったが
折々の折り 引退05/07/16
そのひとつ・・

「ニクラウスさん!
ドロー・ボールとフェード・ボールの打ち方の違いは
どのようにしているのですか・・?」
ドローとフェードってのは・・打ったボールが落下点近くで
僅かに左に曲がったり右に曲げたりする技術のことなのだが

彼の答えが凄かった
「・・私の場合・・
ドローを打ちたいなって思うとドロー
フェードがいいな・・って思えばフェード
そういうことかな・・・」

これを聞いた瞬間は・・
これじゃレッスンにならん・・かもだ
グリップがどうの・・スタンスがどうの・・とかの
技術的な解説があってのレッスン
誰もがそう思うから・・からかわれているのか・・
と感じた視聴者もいたに違いない

ここが天才でもあるが・・
まこと求道精神に満ちた努力のひと
ニクラウスの真骨頂だと思ったのは・・

つまり・・
曲げて打つのは技術だから
いわゆるグリップだのスタンスだのの違いはある
しかし・・それを教えれば誰でも打てるわけではない
もしも・・誰もがそう打てるようになるとしたら
それは技術を知ることではなく
その技術を繰り返すことなのだ

ニクラウスに聞かなくても
あらゆるレッスン書に・・技術は書いてある
できないのは・・繰り返して練習しないからに過ぎないのだ
ニクラウスは・・
殆ど完璧な技術を持っていた
しかし・・実際に打つ瞬間には
その技術は姿を消して・・願いだけが身体を動かしている
それで叶うほどに練習を重ねたから・・
だから大きく乱れたり・・狂ったりしなかったのだ

思っただけで・・願っただけでそれができるまで
飽きずに繰り返して稽古しろ!・・技術とはそうしたものだ
それが彼のレッスンだと・・私は感じた

技術が器に見えるようでは・・は
まだ消化しきれてない技は完全とはいえないよ
また技を見せようとする卑しさも・・不完全を糊塗するだけ
これもまた深い教えだと思える

冒頭の雫は偶然撮れたに過ぎない
しかし・・
野球やゴルフなどの球技のボールを追うカメラマンは
朝飯まえでこれを捕まえるだろう
目にもとまらぬ速さに目と指を慣らす
日々これを繰り返して決定的瞬間をゲットできるようになるのだから・・

どんなことでも
諦めずに繰り返し繰り返し練習していたら
人間って・・途方もないことができるようになるのだ
それだけのポテンシャルをもっている
それに気づくだけで・・
今している苦労は大したことではない・・と思えるのだ

by kamadatetsuya1017 | 2008-04-18 10:52 |
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