「粉引き」、これで「こひき」とか「こびき」と読む。鉄分の多い赤土で成形し、白い化粧土で化粧した後に上釉を掛けて焼いたもの。もともとは古く朝鮮伝来の技法である。
赤土の鉄分に反応して窯変し、思いがけない風合いに恵まれることがある。
「御本を引く」という言い方をするが、器肌に紅斑が現れたりするのもそうした窯変のひとつ。
この茶碗、白い化粧土の合間に土の赤味がでている。
これは、化粧土を柄杓でかぶせるように掛けたためにできた掛けはずしである。そのまま残して景色に見立てるが、これを「火間(ひま)」という。
近頃は、素焼きしたものの上に加飾することが多い。
生ま土に化粧土や釉薬を掛けると壊れやすいからなのだが、これは全てを生掛けで焼いた。
轆轤で挽いた茶碗を乾燥の途中で化粧し、更によく乾燥させてから石灰釉を掛けて、一度で本焼きしたものである。昔風の作り方でやってみたのだ。
失敗すれば、泥舟のように水分を吸って崩れてしまうが、無事にゆけば、このほうが風合いはいい。
陶芸は、偶然や幸運に助けられながら、歩留まりの悪い作業への挑戦ともいえる。
それもまた・・楽しいのである。