幼かった日々

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どこかヨーロッパの田舎を思わせる秋。

茨城県にある地磁気研究所。
広大な敷地に小さな観測小屋や研究室が点在し、この景色の中に、私の幼年から少年期の思い出がいっぱいに詰まっている。

戦前から戦後にかけて、私の叔父は、この研究所の技官だった。
戦争が始まって、祖父母は叔父の官舎に一緒に住んだ。
だから、私にとっては田舎のようなものである。

夏の殆どは、ここで祖父母と暮らした。
兎追いしかの山・・小鮒釣りしかの川、見晴るかす田んぼの続く畦に小さな川が流れ、水すましと一緒になって裸で遊んだ。
畑でもいだ玉蜀黍を焼いて食べ、麦こがしに目を白黒させた。

この敷地の中には足跡のない場所などあるはずもなく、隅々まで駆け回って真っ黒に日焼けしていた。
部屋いっぱいに吊った蚊帳を、開け放した廊下のガラス戸越しに涼風が揺らせ、祖母に抱かれて眠った。

12,3歳の頃、叔父一家とともに祖父母が東京に戻って、やがてここは思い出の田舎になった。
60年近い年月が去り、往時の祖父母の年配になった今、しかし、ここに来ると、幼かった日々が鮮やかに蘇る。
この建物は、あの頃のままである。
by kamadatetsuya1017 | 2005-11-28 02:30 | 風物
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